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2009.11.08 (Sun) 22:46

プロローグ

 黒く濁った雲から大きな雨粒が際限なく落ちていく。
 雨は私の髪から頬をつたい、はるか眼下の地面にぶつかり音を立てた。ひとつひとつではたいしたことないけど、数えきれないほどの雨粒は轟音に変わっていた。
 それでも私の耳には人の声が聞こえる。近くで誰かが話しているわけではない。通学しているときに近所で言われたこと。学校で言われたことが耳に焼き付いて放れないのだ。どれもこれも私のことを批難した中傷や罵声だった。それが何度も繰り返し再生され私の中をぐちゃぐちゃに掻き回す。
 今ではすべての声が私への言葉に聞こえて、人の声を聞くだけで泣き出しそうになる。
 害虫を見るかのような視線が怖い。
 怖くて怖くてたまらない。
 逃げ出してしまいたい。
 どこへ?
 わかっている。逃げる場所なんてどこにもないんだ。きっとどこへ行っても私は批難され続ける。もう普通に人として他人と接することはできないんだ。クラスメイトと教室で笑ったりすることも。友達と学校の帰りに買い物をすることも。頑張って続けていた水泳の大会にもきっと出られない。
 この先どれだけ生きていたって辛いことしかないのなら生きている意味なんてあるのだろうか。何度も考えたことだ。でも、そのたびに出てきた答えはいつも同じだった。
 私の真下は花壇になっていて、そこから咲いた花が豆粒のように小さかった。その先にはグラウンド。この天気で活動をしている部はどこもない。今なら誰にも迷惑をかけずに飛び降りることができる。私があの花壇で死んでいても誰も気づかないかもしれない。むしろやっと死んでくれたと喜ぶだろうか。
 私の足はすでに半分、屋上からはみ出していた。少しでも後ろから風が吹いたらバランスを崩してここから落ちてしまうだろう。それでも怖くはなかった。今まで向けられてきた罵声や視線に比べたらこんなのはなんともない。
 空を仰ぐ。
 あいかわらずまっ黒な雲が雨を降らせていた。
 目を閉じる。
 暗闇の中に私を見捨てた両親の顔が現れ、二人の顔が消えると今度は私の人生をめちゃくちゃにした兄貴の顔が現れた。
 兄貴さえいなければこんなことにはならなかった。でも、私がいなければ兄貴もあんなにはなっていなかったと思うと、簡単に憎むことができなかった。
 でも、もういいんだ。
 もう終わったこと。
 すべて終わったことなんだ。
 私は顔にあたる雨を感じながらゆっくりと躰を前に倒した。
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